佐賀大学医学部循環器内科学教授 野出孝一

野出教授
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御挨拶

2002年に循環器内科教授に就任し、16年余りが経過致しました。この間、大過なく教授職を務めてこれましたのも多くの方々からの御支援の賜物と感謝しております。この間、佐賀大学循環器内科はスタッフ一丸となって質の高い診療、教育と研究を目標に頑張ってきました。

診療面においては、今年度のPCI数は313件、心エコーは9000件を越し順調に増加し、CRTICDLVADTAVI等の高度医療も充実しています。心房細動に対するアブレーションも本格稼働しました。医師派遣による心不全後方支援病院の拡充や在宅医療支援システムにより心不全患者の早期退院が進み、当院の循環器患者の平均在院日数は7日を切っています。佐賀県の心筋梗塞による死亡率は他県に比して経年的に減少し、15年前は全国で28位であったのが、今年は2位の死亡率の低い県となっています。これは佐賀県の循環器の先生方や救急スタッフの御努力によるものでありますが、「全国で一番循環器疾患死亡率の低い県」を目標に急性期医療や循環器予防の充実に更なる努力をしていきたいと思います。

研究面においては、PRIZE PROTECT CANDLE EMBLEM S-HOMES等の多施設共同介入試験が順調に進み、今年は2つの試験結果を公表し、循環器病のガイドラインに資するように致します。基礎研究は時計遺伝子研究が一段落し、トランスレーショナルリサーチを更に推進するために血管内皮由来過分極因子(EDHF)の候補である脂肪酸をターゲットにした創薬プロジェクトを開始しました。この領域は私のライフワークでもあり新しい循環器病薬の上市の為に、あと3年で臨床治験まで進めていきます。

社会活動としては13年間継続した「血管不全研究会」を「一般社団法人日本血管不全学会」として2015年に組織変更し、既に2回の年次総会を開催しています。本学会の目的の一つであった血管不全の生理機能検査の標準化は日本循環器学会のガイドラインとして公表し、次のステップとして血管不全の生理機能診断基準を作成中です。この血管不全診断基準を未病の評価と介入に生かし、循環器病予防に繋げていきます。

日本循環器学会理事としては3期目も終わろうとしており、昨年は「脳卒中と循環器病克服5カ年計画」の作成もさせて頂きました。又、日本高血圧学会のfuture planも担当することになりましたので、循環器関連学会が足並みを揃えて、心臓病制圧に向かう一助になるよう尽力致します。日本循環器学会九州支部長としてはダイバーシティ推進、若手活性化、国際化、小児循環器の充実をテーマに支部運営をしています。20176月の日本循環器学会九州地方会の若手教育セミナーや小児循環器セッションは盛況で1100人を超える参加者となり、12月の日本循環器学会九州地方会では、地方会としては初めてイタリアから研究者が招聘されました。また20186月の地方会ではインドネシア、シンガポールなど東アジアの若手循環器医とのシンポジウムが開催されます。日本循環器学会九州地方会がアジアの若手循環器研究者の交流の場になることを期待しています。

医学教育面に関しては、循環器内科の卒前、卒後教育はスタッフの努力で学生から高い評価を受けています。また医局員が全国の第一線の病院や研究室で研鑽を積み、多くの循環器医、循環器研究者が育っています。多様な人材が切磋琢磨してこそ組織は活性化します。今年度の循環器内科の新入医局員9名のうち、本学出身者は7名ですが、2名は他大学の出身者、3名が女性であることはダイバーシティという観点からも喜ばしいことです。

教授職で一番、大切で面白いのは教育だと最近実感します。赴任時は41歳でしたので年の離れた弟、妹くらいの気持ちでいた研修医達は今や息子、娘の世代になりました。「新しい循環器医療を作ろう」「遠回りや失敗を恐れず道なき道を行こう」と自分にも言い聞かせながら若い人にも常日頃話しています。彼らがpioneer spiritをもったphysicians scientistに成長するまでこれからも行途を見届けていきたいと思います。

201811

佐賀大学医学部循環器内科教授・内科学講座主任教授 野出孝一