臨床研究・特定臨床研究

用語集

GCP

GCPとはGood Clinical Practice(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)のことです。薬機法に定められています。
治験と製造販売後臨床試験に関する遵守事項(計画、実施、モニタリング、監査、記録、解析及び報告など)を定めて、被験者の人権、安全及び福祉の保護のことに臨床試験の科学的な質とデータの信頼性を確保することを目的としています。
平成9年に改正された新GCPは日米欧で合意に達したICH-GCPに準拠しており、これによりブリッジング試験や国際共同試験が可能になりました。

GCPの特徴

  • インフォームド・コンセントの厳格化(文書による同意)
  • 治験審査委員会の強化
  • 役割・責任の明確化
  • 管理システムの明確化

GCPを守らないとどうなる?

GCPは薬機法に基づいており、違反すると罰則や罰金が適用されるような厳しいものですが、現実には企業主導の治験では、医療施設や医療スタッフには罰則は設けられていません。GCPには治験を正しく実施するための具体的な模範基準という性格が強いと考えられます。
GCPに違反すると、違反した症例のデータがすべて使用できなくなったり、重大な場合には違反した症例だけでなく他の症例のデータも使えなくなったり、治験依頼者や規制当局の立ち入り監査を受けることになったりします。

GCPの違反とは?

被験者の安全性の確保は何事においても優先すべきであり、このことはGCPにも示されています。従って、治験実施計画書からの逸脱には緊急の危険を回避するためにやむを得ない場合があることは当然です。
しかし、GCPの基本的な事項を違反した場合には、重大な違反として取り上げられます。例えば、次のような違反です。

  • 重篤な有害事象が発現した際に、発現状況を直ちに治験依頼者に伝えなかった。
  • 安全性の問題を隠すため、実際の検査値とは異なる値を報告した。
  • 本人からの同意を口頭のみで得た(文書を用いなかった)。

このような、違反は悪質である場合も含まれますが、GCPの理解が十分でなかった場合もあります。GCPを理解することが重要です。

治験チームにおける役割・責任の明確化

治験の実施の段階では、治験実施計画書を遵守することが求められます。治験実施計画書からの逸脱や違反は、科学性や信頼性を欠くことのみならず、被験者の安全性に重大な影響を及ぼします。そのため、適格性の確認は慎重に行わなければなりません。また、実施中には治験実施計画書に定められたスケジュールで定められた評価や検査を行い、これを症例報告書にまとめなければなりません。さらに、治験依頼者によるモニタリング(適切に治験が行われているかの確認)にも協力・対応しなければなりません。つまり、通常の診療を超えた業務が多く発生します。そこで、「治験責任医師」の指導・監督のもとに「治験分担医師」や「治験協力者」は、治験業務を実施または支援します。当院では、治験コーディネーター(CRC)が治験協力者として治験の円滑な実施を支援しています。また、患者さんのボランティア精神を尊重し、かつ倫理性、安全性を確保するために当院全体で、治験の実施に取り組んでいます。

インフォームドコンセント

治験におけるインフォームド・コンセントとは、治験担当医師が、治験について、文書を用いて十分な説明を患者さんに行い、患者さんに理解をしていただいた上で、口頭ではなく、文書により同意していただくことです。当院では、この説明の補助を治験コーディネーター(CRC)が行うこともあります。
また、治験の参加は患者さんの自由な意思をもって、いつでもとりやめることができます。

CRC(治験コーディネータ)

治験コーディネーター(CRC)とは、治験をスムーズに行えるように、被験者・医師・治験依頼者(製薬会社)の間に立って、治験の実施を支援します。CRC(Clinical Research Coordinator)と呼ばれています。GCPには「治験協力者」として「治験を実施するチームの一員」と位置づけられています。専門的立場から治験の実施に終始たずさわり、治験責任医師をサポートします。主な業務内容として、被験者ケア(同意説明補助、来院時および電話での面接・相談対応、有害事象への対応)、医師の支援(スクリーニング補助、スケジュール管理、併用薬の確認、データ管理、症例報告書作成支援、その他報告書の作成支援)、治験依頼者への対応が挙げられます。CRCは国家資格ではなく、特別な資格を必要とはしませんが、日本臨床薬理学会や日本SMO協会、SoCRAなどの団体によるCRCの認定制度があります。
当院では、看護師と薬剤師がCRCとして業務を行っています。

ICH-GCP

ICH-GCPとは、医薬品の世界規模での研究開発が当然視される時代を背景に、世界共通の臨床試験実施基準として近年の科学技術・医学・薬学の進歩によるこれまでにない画期的な医薬品などをより早く医療に提供するうえで大きな役割を果たしています。

IRB

治験は試験的な要素を伴うので、GCP(Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)に従って行われます。 当院では、病院内に病院長がこのGCPに従って設置した、医師、医師以外の方(非専門家)、病院及び病院長と利害関係のない方(外部委員)により構成された「治験審査委員会」(治験等の実施を審査する委員会、IRB: Institutional Review Board)を設けています。なお、委員については、委員名簿をご参照下さい。
当院で実施される治験は、この委員会において科学性、倫理性について審査され、承認されています。また、治験の実施期間中もあらたな情報が得られた場合には、治験継続の可否等について調査・審査が行われます。

治験審査委員会の名称:佐賀大学医学部附属病院治験審査委員会
住所:佐賀県佐賀市鍋島五丁目1番1号
設置者:佐賀大学医学部附属病院 病院長

治験依頼者・モニター

治験依頼者・モニターとは、治験を計画し、当院へ治験の実施を依頼している製薬会社を治験依頼者と言います。
治験依頼者が当院において治験が適切に実施されているか確認(モニタリング)する者を指名しますが、この担当者をモニターと呼びます。モニターは適切な訓練を受けて必要な科学的および臨床的知識を有します。製薬会社が開発受託機関にモニター業務を委託する場合もあります。

直接閲覧・監査

直接閲覧・監査とは、モニターや監査担当者が治験に係る原資料を直接閲覧すること。治験が適切に実施されているか確認したり、症例報告書作成のためにデータを収集したりすること、または適切にデータの収集が行われているかを確認したりすることで、GCPで実施することが義務付けられています。また、治験実施医療施設は直接閲覧や監査に必要な診療録やその他の記録を閲覧に供し、協力しなければなりません。

二重盲検試験とプラセボ

二重盲検試験とプラセボとは、使用する薬物の内容を知ることにより、服用している患者さんにも、評価を行う治験担当医師にも心理的な偏り(先入観・思い込み)が生じることがあります。そこで、治験薬を服用する群と治験薬以外を服用する群などに分け、患者さんにも治験担当医師を含む医療スタッフにもどちらの薬物を用いているか知らせずに、治験を行う方法のことを二重盲検試験と言います。このほかにも、様々な治験の方法がありますが、二重盲検試験は比較的多く用いられる方法の一つです。
どの群になるかは登録センターなどの機関を通して、治験実施計画書に定められた方法で割付が行われます。治験薬を服用する群でも投与量が異なる複数の群がある場合があります。さらに、治験薬以外の群においても従来治療における標準薬を使用する場合が主ですが、国際共同治験では日本国内で承認されていない薬剤を使用する場合もあります。
また、治験では、薬の候補物質(有効成分)を含む治験薬以外に、有効成分を含まない「プラセボ」を使用することがあります。プラセボは、色や形といった外見、または味やにおいなどからは、有効成分を含む治験薬と全く区別がつかなくなっています。その理由は、病気が薬による治療を行わなくても自然によくなること(自然治癒)があるためです。そのため、薬としての本来の効果を調べるためには、プラセボを飲んだ患者さんと有効成分を含む治験薬を飲んだ患者さんを比較することが必要となります。
なお、治験担当医師には割り付けられる確率とプラセボには有効成分を含まないために期待される効果がないことを患者さんに説明する義務があります。

有害事象

  1. 治験中に発現したあらゆる好ましくない症状を「有害事象」として報告します。因果関係は問いませんので、偶発症や検査値の異常なども含まれます。
    有害事象が発現した場合には、安全性確保のために、適切な医療を提供しなければなりません。状況に応じて、禁止薬の使用の必要性、治験薬の投与(継続・中止)などに留意して治療を行います。また、補償についても検討しなければなりません。
  2. 治験中に発現したあらゆる好ましくない症状のうち、重篤なものは「重篤な有害事象」として知りえたら直ちに治験依頼者と病院長に報告しなければなりません。重篤な有害事象とは一般的に次のように定義されます。
    (1)死亡 (2)死亡につながるおそれ (3)入院または入院期間の延長 (4)障害
    (5)障害につながるおそれ (6)(1)~(5)に準じて重篤 (7)後世代における先天性の疾病または異常