診療案内

心臓のお話

虚血性心疾患~狭心症と心筋梗塞のおはなし~

虚血とは何でしょうか?

心臓は、私たちがまだおかあさんのお腹の中にいるときから生命を終える時まで、常に全身に血液を送ってくれる筋肉(心筋)でできたポンプです。では、心臓自身はどこから酸素や栄養を得ているのでしょうか? 心臓の中にはたくさんの血液が流れていますが、実は、心臓自身はこの血液を直接利用することはできません。心臓の表面には「冠動脈」と呼ばれる直径3mm前後の血管が走っていて心筋に血液を届けています。 ところが、何らかの原因でこの冠動脈が狭くなったり、詰まったりすると心臓の筋肉は充分な血液を得ることができずに酸欠や栄養不足に陥ってしまいます。この状態を「虚血」、それによって起ってくる狭心症や心筋梗塞などの病気を「虚血性心疾患」といい増加傾向にあります。

狭心症と心筋梗塞はどのように違うのですか?

冠動脈が狭くなってくる原因として、一番多いのは「動脈硬化」によるものです。冠動脈では「粥状硬化」とよばれるタイプの動脈硬化がみられます。血管の壁にコレステロールなどの脂肪がたまると、そこに血液の細胞などが集まってきて「粥腫」とよばれるものをつくり、これによって血管内が狭くなるものです。血管の内側におもちのような塊がくっついている感じをイメージしてください。粥腫ができた血管は線維成分も増えるため、血管壁が硬くなって弾力を失ってしまいます。血管が狭くなった場合、安静時は何とかやっていけるのですが、例えば坂道や階段をのぼったり通常よりきつい仕事をしたときなど、心臓が普段より余分に血液を必要とする状態になった場合は、それをまかなうことができずに心筋が酸欠となって症状がでてくるのです。安静にしておくと、心臓が必要とする血液量ももとの状態にもどるので、症状は数分で自然におさまっていきます。 また、このような狭窄でなく血管の一時的な痙攣によっておこる狭心症もあり、これは安静時、特に夜や明け方に多く、日本人には多いことが知られています。

ところが、たまに「粥腫」の表面が破れることがあって、このときは粥腫のまわりに「血栓」と呼ばれる血の塊ができてきます。

この「血栓」が血管内を完全に詰めてしまうとその部分の心筋には全く血液がとどけられなくなって、細胞が死んでしまいます。この状態が「心筋梗塞」です。同じことが脳の血管に起こると、脳梗塞になります。心臓や脳の細胞は新たに生まれ変わることができないので、一旦、梗塞がおこると機能が失われた状態になり後遺症が残ってしまいます。

狭心症や心筋梗塞ではどのような症状がみられますか?

狭心症のときの症状は、よく「胸痛」といわれますが、どこかをぶつけたりしたときの痛みとは違い、むねを「締め付けられたり」「圧迫されるような」痛みといわれます。胸がぐーっときゅうくつになるような感じとでもいえばいいでしょうか。外から胸を抑えたり、深呼吸をしても痛みの強さは変わりません。また、「放散痛」といって胸痛発作時にみぞおち、左肩や喉、下顎に痛みが響くことがあります。これらの痛みは多くは数分でおさまります。ところが、心筋梗塞になると、胸痛は強く時間も長く、冷汗や吐気、息苦しさなどを伴います。「死ぬかと思うほど苦しかった」とおっしゃる患者さまも多いです。このような時は我慢せずにすぐ医療機関を受診してください。 このように、狭心症や心筋梗塞は非常に特徴的な症状がありますが、糖尿病やご高齢者では症状がでにくいことがあるので注意が必要です。

狭心症や心筋梗塞と診断するには?

さきほども書いたように狭心症や心筋梗塞には特徴的な症状がありますので、これで病気を疑うことになりますが、診断をつけるには検査が必要です。心筋梗塞の場合は、血管がずっと詰った状態ですので、心電図に心筋梗塞に特徴的な波形がでたり、血液検査で心筋が壊れたことを示す指標がでてきます。また、心臓の超音波検査(エコー)をすると梗塞のおきた部位の動きがわるくなっているのが見えます。しかし、狭心症の場合は数分で回復するので、症状がおさまっているときは心電図でも異常がありません。そのため、負荷心電図といって、運動していただいてわざと虚血を起こして心電図に変化が出るかどうかをみる検査や、ホルター心電図という24時間ご自宅での生活中の心電図を記録する検査などが必要となります。負荷心電図の方法もいくつかありますが、代表的なものはマスター心電図といってオリンピックの表彰台のような階段を昇り降りするものや、自転車こぎ(エルゴメーター)あるいはトレッドミルといって坂道になる動くベルトの上を歩くものなどが使われています。また、狭心症かどうかの診断には使えませんが、最近は脈波伝導速度という動脈硬化の傾向があるかどうかを簡単にみることができる機械もあります。

狭心症の診断がついたら、循環器内科で冠動脈造影という検査を行い、場合によっては冠動脈を中からひろげる治療や心臓血管外科でバイパス術を行います。

冠動脈造影と治療

以上のような症状や検査から狭心症や心筋梗塞の可能性が高いと判断された場合には、実際に冠動脈をみてみることになります。この検査を冠動脈造影といいますが、カテーテルという細い管を血管や心臓の中にすすめていきますので、このような心臓の検査を広く心臓カテーテル検査という呼び方をします。 現在、佐賀県内で心臓カテーテル検査を行うことができる医療機関は数か所しかありませんが、そのほとんどで手首のところの動脈(脈拍をみてもらうときに触れるところです)からの検査が可能です。以前は脚から検査を行っていましたが、手から検査できるようになって、検査後の安静が短くてすむようになりました。

検査は冠動脈の入り口までカテーテルをすすめ、造影剤というお薬を流して血管を映してみます。もし、このときに血管に狭いところがみつかった場合には、狭さの程度や部位によって、お薬での治療か、カテーテルのよる治療か、バイパス術という手術かを選ぶことになります。最近では、カテーテル治療を受けられる患者さまが増えてきました。これは、血管の中に細い風船のついたカテーテルをすすめて、一番狭いところで、風船を膨らませて血管を中から拡げます。ただし、それだけではまた狭くなってしまうことが多いので、現在は多くの場合、風船で拡げるのと同時に「ステント」というステンレスの網目の筒を拡げたところに置いて内張りをします。近年、ステントの表面にお薬を塗って拡げたところがまた狭くなってきにくくしたステントも使用できるようになりました。 狭心症に対するステント治療の場合、狭くなっている血管の数などによっても異なりますが、数日で退院が可能です。

冠動脈が詰まった急性心筋梗塞の場合は、心臓の細胞を救うためになるべく早く、緊急でこのカテーテルによる検査と治療を行い、詰まっている血管を通してあげることが必要になります。

このようにすすんできたカテーテル治療ですが、狭くなっている部位や冠動脈の数によっては、外科的に冠動脈バイパス術をおこなったほうが良い場合もあります。

最後に~虚血性心疾患を予防するには

最初にも書きましたように狭心症や心筋梗塞は最近増えてきていますが、その原因は肥満やタバコ、高脂血症、高血圧、高血糖など生活習慣病が増えてきているためと考えられています。一旦、狭心症や心筋梗塞になってしまう前に、これらの「危険因子」とよばれているものをしっかりとコントロールしておくことが重要です。そのためには、日頃から食事に気をつけ適度な運動を心がけること、禁煙を心がけることと、検診や人間ドックなどによる早期発見と軽症のうちからの早期治療が今後ますます重要になってくると思われます。

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