小腸カプセル内視鏡所見を用いた早期クローン病診断スコアを開発しました

 クローン病(CD)は10~20歳代の若年に好発し、全消化管に再発性の潰瘍性病変を形成する慢性の炎症性腸疾患です。なかでも小腸は70~80%と高率に侵され、腸管狭窄、瘻孔、膿瘍といった合併症により手術が必要となることが多いため、CD診療において小腸病変の管理はきわめて重要です。

 小腸カプセル内視鏡検査(SBCE)は、5~7mとされる小腸を一回の検査で観察できる低侵襲な内視鏡検査です。そのため、腸管合併症を有していないCDの小腸病変評価に適していると考えられます。我々は「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班*」においてCDの早期診断に有用なSBCE所見に関する検討を行い、早期CDの拾い上げに有用と考えられる微細な内視鏡所見を見い出しました1)(図1)。この知見はわが国のCD診断基準の参考所見にも採用され、早期発見・治療介入に貢献できると考えられますが、微細な所見のみからはCDの確定診断ができないのが現状です。

 このような問題点の解決策の一つとして、我々は先行研究の知見を用いて早期CD診断のためのスコアリングシステムを開発しました2)(図2, 3)。CDの典型的な所見とされる縦走潰瘍や敷石像を有する症例では腸管へのダメージは始まっていると考えられます。治療介入の遅れにより、CD診断時にはすでに小腸切除が必要となる場合も決して少なくありません。大腸内視鏡検査で明らかな異常は認められないもののCDの可能性が否定できない場合は、小腸検索を目的として当院にご紹介いただければ幸いです。

*難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班ホームページ http://www.ibdjapan.org/

参考文献

  1. Esaki M, et al. Capsule endoscopy findings for the diagnosis of Crohn’s disease: a nationwide case-control study. J Gastroenterol 2019
  2. Ogino Y, Esaki M, et al. Development of a capsule endoscopy scoring system for the early diagnosis of small bowel Crohn’s disease. J Gastroenterol 2025

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