呼吸器外科

概要

佐賀大学胸部・心臓血管外科には(1)心臓血管外科(2)呼吸器外科の二つの診療科があります。

これまでこれら二つの分野は一診療科として扱われてきましたが、疾患の多様性と症例数の増加により、2008年4月より呼吸器外科が診療科として独立する事になりました。

呼吸器外科では主として肺・縦隔疾患の外科的治療を行います。心臓血管外科と同一講座のため拡大手術なども可能であることと、内科などの他科との連携がスムーズであることが特徴です。

「佐賀県の住民が、地元で安心して標準的な医療が受けられる様な地域完結型医療をめざし、住民の皆様と県内の各医療機関から高い信頼を得られるような診療部門の形成をめざす」事を基本理念としています。

主な医師派遣病院:佐賀県医療センター好生館、新古賀病院

取り扱っている主な疾患

取り扱う主な疾患は、肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、気胸、膿胸、中枢気道狭窄などです。以下に各々について記します。

a 原発性肺癌(肺がん)

日本では、疾病による死亡原因の第1位は悪性腫瘍であり、その中でも肺癌患者の死亡例は増加の一途を辿っており、がんの部位別死亡率では肺癌は男性で1位、女性で2位となっています。しかしながら肺がん全体でみると5年生存率は約10%と予後不良です。肺癌の治療には手術療法、化学療法、放射線療法、インターベンション療法、緩和ケアなどがあり、これらを単独もしくは組み合わせた「集学的治療」が各症例ごとに検討されます。最近では新規抗癌剤の開発、手術前後の安全性向上、インターベンションなどの特殊治療の併用などが発達し、予後を少しでも改善するための努力が世界中でなされています。 当施設では呼吸器チームによる連携・努力の甲斐あって、肺癌の予後はに示す様に良好な治療成績が得られています。また手術による合併症も低く抑えられていると考えられます。それでもまだ満足いくものではなく、更なる工夫が必要だと実感します。

b 肺癌以外の腫瘍

肺は全身の最終的なフィルターであるため、様々な臓器の悪性腫瘍から転移を来たしやすく、これを転移性肺腫瘍と呼びます。この様な症例ではおおもとの臓器との兼ね合いで治療方針が決定されます。その他にも肉腫系腫瘍や良性腫瘍など様々なタイプの腫瘍性疾患が発生しやすい臓器が肺なのです。

c 縦隔疾患

縦隔とは胸の中央にある部分で、心臓・大血管・食道・気管・胸腺・神経などの重要臓器がひしめきあった部位をさします。従って様々な組織から色々な種類の腫瘍が発生し、これらをまとめて縦隔腫瘍とよび、手術が必要になる場合が多いのです。腫瘍以外にも炎症や外傷で外科的処置が必要になることがあります。

d 気胸

肺に穴が空いて肺が縮んでしまうことを気胸といいます。若年者にみられる自然気胸、高齢者に多い肺気腫を伴う気胸、感染症や腫瘍による続発性気胸、外傷性気胸、月経随伴気胸など、これにも多くのタイプが存在します。

e 胸腔鏡下手術

胸の中に胸腔鏡というカメラを挿入して手術を行うことを胸腔鏡下手術とよびます。数箇所の1.5cm程の小孔だけで行う手術から、手が入るくらいの開胸創と併用して行う手術まで様々です。カメラを使用する目的は、傷を小さくして術後の疼痛・回復・美容に好影響を及ぼすことと、肉眼では見えにくい部分を拡大視して安全性を高めることです。胸腔鏡を使用せずに大きく胸を開く手術を開胸術とよびますが、両者の明確な違いを定義することは難しく、要するに肺に達する経路の違いであって、胸の中で行う操作は同じものだと考えています。当院では、肺・縦隔のほとんどの手術に胸腔鏡を使用し、胸の創の大きさは各症例に応じて決定しています。

f 呼吸器インターベンション治療

胸を開かずに気管支内視鏡で診断や治療を行うことを呼吸器インターベンションと呼びます。太い気道が腫瘍や肉芽などで狭くなると窒息してしまう危険があり、この治療は難しい事が多く、特殊な技術や機器を必要とします。危険を伴う処置であり、悪性腫瘍の場合では治療不能と判断される事も多いのですが、当院はこの治療に熟練した医師が常勤している数少ない病院のひとつであり、積極的に取り組んでいます。

特色

標準的治療を少ない合併症で実現できる事を治療の中心に考えています。ほとんどの症例に対して、胸腔鏡を多用して小さめの開胸創で手術を行っています。一般的治療以外に次の様な特色があります。

  1. 拡大手術:循環器外科と同一講座であるため、人工心肺下の手術や心・大血管合併切除術などの拡大手術が可能であり、手術中に急きょ補助循環が必要になった時の対処がスムーズに行えます。
  2. 呼吸器カンファランス:呼吸器を専門とする外科・内科・放射線科・病理で構成する話し合いの場の事で、毎週木曜日に開いています。ひとつの科の考えに偏らず、様々な視点から疾患を診る事ができ、集学的治療戦略が可能です。他科との垣根が低い事が本学呼吸器部門の大きな特色です。
  3. 呼吸器インターベンション治療:太い気道が腫瘍などで狭くなると、検査や治療が思うように進められなくなり、窒息死に至る場合があります。当院では技術的に困難といわれているシリコン製気道ステントを扱っており、県内外から多くの症例が集まります。この治療が可能なことによって、患者様の生活の質の向上や、積極的治療への橋渡しが可能となり、ことに悪性疾患の治療に幅ができます。

取得した認定学会名

取得している各専門医・指導医の数

日本外科学会専門医4名
日本呼吸器外科学会専門医3名
日本外科学会指導医1名
日本胸部外科認定医1名
癌治療認定医1名
呼吸器内視鏡学会専門医2名
呼吸器専門医1名